時代と地域に応じた良質な先進医療の提供。

　当院に入院される患者さまのほとんどは、急性期病院や一般病院で積極的な治療を受けたにもかかわらず完治せず、様々な後遺症状が残り、食事、更衣、入浴、排泄など基本的な日常生活動作、そして何とか救われ延ばされた生命さえも、それを維持するためには、今後も多くの医療処置や専門的な介護が必要で、一般の家庭や施設では対応困難な方々です。
　当院では、そのような患者さまご本人やそのご家族の意向を尊重しつつ、患者さまに穏やかな療養生活を送っていただくことを目標にして、医師、看護師、介護士その他さまざまな職種の職員が協力して、患者さまそれぞれの問題に誠実に取り組み、そのQOL⁽¹⁾の維持・向上をめざした医療、介護を提供し、多くの場合、最終的に看取りまでさせていただきます。
　さて、2022年9月、我が国の65歳以上の高齢者は過去最多の3627万人、その総人口に占める割合(高齢化率)は29.1%になりました。予想を遙かに超える勢いで、高齢化社会は進んでいます。今後は、死亡者数が増加し、人口減少が加速する多死社会になると言われていますが、そのような時代の要請もあり、当院はいわゆる療養型病院として、大阪市及びその周辺地域における地域医療の一翼を担っています。
　看取りまで視野に入れた高齢者医療、終末期医療にはさまざまな問題もありますが、当院では、過剰でもなく、過小でもない、患者さまの人間としての尊厳が保たれる適正な医療とは何かを常に考えて、ひとり、ひとりの患者さまの最後が安らかな旅立ちになるように、患者さまやそのご家族を援助したいと思います。

QOL⁽¹⁾ of life の略で、生活の質、生命の質などと訳される。病気などによる身体的障害や苦痛の改善だけに注目するのではなく、病気や障害を抱える人の生活や人生に目を向け、その精神的、社会的活動性を含めた総合的な活力、生きがい、満足度などを示す尺度。

朝日生野病院　院長
笠　正明